「日本人は鳥の声、虫の声を左の脳で処理している。」ということを聞かれたことがあると思います。今から３０年ほど前に、角田忠信という学者が発表し、話題となりました。それまでは、鳥の声や虫の声は全ての人が右の脳で処理していると考えられていたからです。日本人に限り、鳥の声、虫の声を人間の声と同じように左の脳で聞きとっているのです。ただし、ＤＮＡ上は純粋の日本人でも外国で育ち、その国の言葉で育った人は外国人と同じように鳥の声、虫の声を右の脳で聞いているということです。
　言葉は人間が作り出したものです。しかし、ひとたび言葉が作り出されると『言葉』は心を育てるという作用を生み出しました。豊かな自然に抱かれて自然と共に生きているという伝統的な日本人の感性が日本語を生み出し、日本語で育った者は、鳥や虫の声を人間の言葉と同じよう意味をもった言葉として感じ取り、花が咲けば我々に笑いかけていると感じる感性を育てられるのです。
　豊かな言葉が豊かな心を育て、言葉が貧しいと心も貧しくなります。美しく優しい心を育てるためには、美しく優しい言葉を豊かに使う努力が必要となるわけです。・・・今回も石井勲著「日本語の再発見」を参考にしました。（裕）

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